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8 年前
美術家・宮下昌也の作品を紹介する、ブログギャラリーです。 過去の作品から新作まで、作家自らコメントを書いて代表的な作品を取り上げて行きます。
作品の制作数は年々増えている。しかし、〆切りのある絵であったり、ライブペインティングで描く絵が多く、時間をかけて描いた絵画らしい絵画作品は思う様に描けていない、と感じる時がある。好きな絵で飯を食えているだけでありがたい話なので、贅沢を言うつもりは毛頭ないが.....。
「生態系の環」同様、毎年6月に長野県駒ケ根市で開催される「くらふてぃあ・杜の市」でライブペインティングで描いた100号の絵だ。もう10年以上続いている「くらふてぃあ」で行っているライブペインティングは、2日間かけて描いているので、ライブと言っても公開制作に近い。この年は「くらふてぃあ」に合わせて飯田市のアートハウスというギャラリーカフェで個展を開催したので、伊那谷に2週間近く逗留した。タイトルの「ウレシパモシリ」は、アイヌの言葉で「全ての生命が調和している状態」を表しているそうで、逗留中お世話になった友人に教えてもらった。この言葉を聞いた時、僕が描きたい世界はまさにそれだ!と感じ、この絵のタイトルとした。
ポストカードで一番人気だし、いろいろと印刷物にもなっているので、この絵を見たことがある人は多いと思う。そう言う意味では代表作といえるだろう。木更津のアムネジアというブティックでライブペインティングした絵に、加筆して完成させた。アムネジアはオープンの時、お店のトレードマークの蓮の花のイラストを描いたお店で、そのイラストの延長線上にある風景を描こうと思ってライブペインティングしたのだが、その時は完成しなかった。いつもライブペイントの絵はその時の一期一会として、加筆し無いことに決めているので、こうゆう絵は珍しい。ライブペインティングが、初期のスタイルから今のスタイルに移行する過度期で、迷いながら描いていたのかもしれない。
鴨川の里山に暮らす様になって10年が過ぎた頃から、目の前にある自然や日々の暮らしを、只ただ描いてみたいと思う様になった。それまでは、目には見えないが感じられるものまで描きたいと思い続けて来たが、圧倒的な自然の中で暮らしていると、今まで内面に求めていた命の存在が、風景を描くだけで表せるのではないかと思う様になって来たのだ。この絵は、そう言った想いが初めて満足いく形になった、僕にとって記念すべき作品だ。絵本作品「なつみかんのきのはなし」の元になった絵でもある。長く手元に置いていろいろな展覧会に出品しようと思ていたのに、初めに出した展覧会で売れてしまった!幸い、親しい方が買ってくださったので、ここぞ!という展覧会には、貸し出していただいている。この絵の前で泣いてくれた人が何人かいる。絵描き冥利に尽きる。ありがとう。